NordVPNはパナマ拠点の大手VPNサービスで、118ヶ国7,400台以上のサーバー網と業界屈指のセキュリティ機能を備えている。VPN選びで迷ったらNordVPNを第一候補にすべき理由を、各機能の実用面から解説する。
速度を左右するプロトコル:NordLynx
NordVPN最大の武器がNordLynxだ。WireGuardプロトコルをベースにNordVPN独自のダブルNAT技術を組み合わせたもので、従来のOpenVPNと比較して接続速度が大幅に向上している。
WireGuardはコードベースがわずか4,000行程度(OpenVPNは60万行超)と軽量で、暗号化処理の効率が高い。NordLynxはこのWireGuardにプライバシー保護のレイヤーを追加し、「速度」と「匿名性」の両立を実現した。日常のブラウジングではVPN未接続時とほぼ変わらない体感速度で使える。
プロトコルの切り替えはアプリの設定画面から可能で、NordLynx、OpenVPN(UDP/TCP)、IKEv2から選べる。特別な理由がなければNordLynxのままで問題ない。
セキュリティ機能の全貌
Threat Protection Pro(脅威対策プロ)。Standard以上のプランで利用できる統合セキュリティ機能で、マルウェア、フィッシングサイト、トラッカー、広告をブロックする。VPN接続が切れている状態でも動作するのが特徴で、ブラウザ拡張なしで広告ブロックが実現する。ダウンロードファイルのマルウェアスキャンにも対応しており、ウイルス対策ソフトの補完としても機能する。
ダブルVPN。トラフィックを2つのVPNサーバー経由で二重に暗号化する機能。通常のVPN接続でも十分な暗号化(AES-256)が施されるが、機密性の高い通信や政府の監視が厳しい地域での利用に追加の安心材料となる。速度はやや低下するため、常時利用ではなく必要なときだけオンにするのが実用的だ。
Onion over VPN。VPN接続にTor(The Onion Router)ネットワークを組み合わせる機能。Torブラウザを別途インストールしなくても、NordVPNアプリ単体でTorネットワーク経由の通信ができる。ジャーナリストや内部告発者など、通信の匿名性が生死に関わる場面を想定した上級者向け機能だ。
キルスイッチ。VPN接続が予期せず切断された場合に、インターネット通信を自動で遮断する機能。これにより、VPNが切れた瞬間に本来のIPアドレスが漏洩するリスクを防ぐ。アプリ単位でキルスイッチを設定できるため、「VPNが切れたらブラウザだけ止める」といった細かい制御も可能だ。
便利な付加機能
Meshnet(メッシュネット)。自分の複数デバイスや、信頼できる友人・家族のデバイスとプライベートネットワークを構築できる機能。ファイル共有やリモートアクセスに使えるほか、海外にいる家族のデバイスをルーティングポイントとして使い、その国のコンテンツにアクセスする——といった活用もできる。追加料金なしで利用可能。
Dark Web Monitor。Standard以上のプランで利用できる機能で、メールアドレスがダークウェブ上のデータ流出リストに含まれていないかを監視する。流出が検出されると通知が届き、パスワード変更などの対応を促される。
専用IPアドレス。追加料金で固定のIPアドレスを取得できるオプション。通常のVPN接続は多数のユーザーでIPアドレスを共有するが、専用IPなら自分だけのアドレスが割り当てられる。IPベースのアクセス制限を設定しているサービスへのログインがスムーズになるメリットがある。
料金プランと契約
Basic
$2.99/月〜
- VPN機能のみ
- 2年契約
Standard
$4.49/月〜
- Threat Protection Pro
- Dark Web Monitor
Complete
$5.49/月〜
- パスワードマネージャー
- 1TBクラウドストレージ
NordVPNの料金体系は3段階。Basic(月額$2.99〜、2年契約)はVPN機能のみ、Standard(月額$4.49〜)はThreat Protection ProとDark Web Monitorが追加、Complete(月額$5.49〜)はさらにクロスプラットフォームのパスワードマネージャーと1TBのクラウドストレージが含まれる。同時接続は最大10台、30日間の全額返金保証付き。PwCとDeloitteによる第三者監査でノーログポリシーが検証されている。
初期設定と使い方
対応デバイスとプラットフォーム
NordVPNはWindows、macOS、iOS、Android、Linux、ChromeOS、Fire TV、Android TVに対応したアプリを提供している。Chrome、Firefox、Edgeのブラウザ拡張も利用可能。ルーター向けの設定ガイドも充実しており、ASUS、TP-Link、Netgear等の主要メーカーで直接設定が可能だ。スマートTVやゲーム機(PlayStation、Xbox、Nintendo Switch)はルーター経由でVPN保護を適用できる。Meshnet機能を使えば、VPN非対応デバイスを他のデバイス経由でVPN接続することも可能だ。
NordVPNのデメリット
万能に見えるNordVPNにも弱点はある。公平な判断のために押さえておきたい。
- NordLynxで高速接続
- 118ヶ国7,400台の大規模サーバー網
- Threat Protection Proで広告・マルウェアブロック
- PwC・Deloitte第三者監査済み
- 難読化は一部サーバーのみ(全サーバー対応ではない)
- 月額契約は割高($12.99〜)
- 2019年にサーバー侵害事件(現在は改善済み)
全サーバー難読化ではない。難読化(VPNトラフィックを通常のHTTPS通信に偽装する機能)は一部の専用サーバーに限られる。中国やイランなどDPIによる検閲が行われている国では、全サーバーが難読化対応のExpressVPNの方が接続成功率が高い場合がある。
月額契約は割高。2年プラン(月額$2.99〜)は業界最安クラスだが、1ヶ月プランは$12.99〜と一気に跳ね上がる。短期間だけ使いたい場合は、30日返金保証を「お試し」として活用するのが現実的だ。
2019年のサーバー侵害事件。2019年にフィンランドのデータセンターの1台が侵害されたことが公になった。NordVPNはこれを受けて全サーバーの監査を実施し、RAM-onlyサーバーへの移行を加速させた。現在はPwCとDeloitteの第三者監査をクリアしており、セキュリティ体制は大幅に強化されている。
NordVPNが最も活きる場面
- サブスク節約(118ヶ国のサーバー網が活きる)
- 公衆Wi-Fiのセキュリティ(Threat Protection ProとキルスイッチでWi-Fi経由の脅威をブロック)
- 海外からの日本コンテンツ視聴(日本サーバーの品質が高い)
- 家族でのデバイス保護(同時10台接続)
こうした複数の用途を1つのVPNでカバーしたいなら、NordVPNが最もバランスの良い選択肢だ。
NordVPNの詳しい評価は「NordVPNの評判・口コミ」、料金プランの比較は「NordVPNの料金プラン解説」、ExpressVPNとの違いは「NordVPN vs ExpressVPN徹底比較」を参照してほしい。